会社の解散・清算の税務申告の流れ|申告は3回必要・期限と注意点【税理士解説】|コラム
コラム
2026.10.09
税務顧問
会社の解散・清算の税務申告の流れ|申告は3回必要・期限と注意点を税理士が解説
WRITER
会計事務所で、主に中小の法人と医業、不動産所得がある方を担当し、節税対策や申告書の作成に従事。2017年に税理士登録、大見光男税理士事務所を開業。
執筆:大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士。
この記事の要点は4つです。
会社をたたむときの法人税の申告は、解散の日まで、清算中の1年ごと、残余財産が確定したとき、の最大3回あります。
最後の申告だけは期限が2か月ではなく1か月で、株主に財産を分けるならその前日までに出す必要があります。
社長が会社に貸していたお金を帳消しにすると会社の利益になりますが、残余財産がない見込みなら期限切れの赤字で相殺できます。
登記と公告の実費は8万円前後、最短で3か月程度で終わります。
解散と清算は別の手続き
会社をたたむ手続きは、「解散」と「清算」の2段階に分かれています。
解散は、株主総会で「この会社の事業をやめる」と決めることです(会社法第471条)。
解散しただけでは会社は消えず、清算という財産の整理に入ります(会社法第475条)。
清算では、清算人が売掛金を回収し、借入金を返し、残った財産を株主に分けます。
清算人には、特に決めなければそれまでの取締役がなります(会社法第478条)。
すべて終わって清算結了の登記をした時点で、会社は正式に消滅します。
税務申告は、この解散から清算結了までの流れに沿って、区切りごとに必要になります。
会社をたたむ手続きの全体像と費用は、会社をたたむときの手続きと費用の記事で解説しています。
この記事では、そのうち税務申告の部分を詳しく説明します。
法人税の申告は最大3回
通常の会社は、決算日ごとに年1回申告します。
解散した会社は、事業年度の区切り方が変わります(法人税法第14条)。
解散の日で事業年度がいったん終わり、その翌日から清算中の事業年度が始まります。
残余財産が確定した日で、最後の事業年度が終わります。
この結果、申告は次の3種類になります。
解散事業年度の申告
直前の決算日の翌日から解散の日までを1つの事業年度として申告します。
たとえば3月決算の会社が10月31日に解散した場合、4月1日から10月31日までの7か月分です。
申告期限は、解散の日の翌日から2か月以内です(法人税法第74条)。
中身は通常の決算とほぼ同じで、解散までの売上と経費をまとめます。
清算事業年度の申告
解散の日の翌日から1年ごとに事業年度を区切り、清算が1年以上続く場合はその都度申告します。
申告期限は、各事業年度の終了日の翌日から2か月以内です。
清算が解散から1年以内に終われば、この申告は発生しません。
小さな会社であれば、解散から3か月から半年で清算が終わることが多く、この申告が不要なケースも多いです。
残余財産確定事業年度の申告
借入金をすべて返し、財産を現金に換え、残りの金額が固まった日を「残余財産の確定の日」といいます。
直前の事業年度の翌日からこの日までを最後の事業年度として申告します。
ここだけ申告期限が違い、残余財産の確定の日の翌日から1か月以内です(法人税法第74条第2項)。
さらに、1か月以内に株主への最後の分配を行う場合は、その分配の前日までに申告しなければなりません。
分配を急ぐと申告期限がさらに前倒しになるため、分配の日取りは申告の準備と合わせて決める必要があります。
清算中の申告で気をつけること
社長からの借入金の帳消しは会社の利益になる
小さな会社では、社長が会社に貸しているお金(役員借入金)が残っていることがよくあります。
会社に返す財産がない場合、社長がこの貸付金を放棄して帳消しにします。
会社から見ると、返さなくてよくなった借金は「債務免除益」という利益です。
法人税の計算では、この利益に対して課税される可能性があります。
ただし、解散した会社で残余財産がないと見込まれる場合は、通常なら期限が切れて使えない昔の赤字も含めて、債務免除益と相殺できます(法人税法第59条第4項)。
この仕組みを知らずに申告すると、払わなくてよい税金を払うことになります。
役員借入金が多い会社をたたむときは、最も注意が必要なところです。
財産を売ると売却益が出る
清算中に車両や不動産を売ると、帳簿上の金額より高く売れた分は利益になります。
社長が会社の財産を引き取る場合も、時価で売ったものとして扱われます。
帳簿上の価値がゼロに近い車を社長が引き取り、実際には相応の価値があったという場合、その差額が利益として課税されます。
財産を誰にどの金額で渡すかは、申告への影響を見ながら決めます。
均等割は清算結了まで続く
法人住民税の均等割は、清算中も課税されます。
東京23区の小さな会社で年額7万円、事業年度が1年未満のときは月割りです。
解散しても清算が長引けば、その分だけ均等割がかかり続けます。
手続きを早く終えることが、そのまま費用の節約になります。
消費税の申告も忘れない
消費税の課税事業者であれば、清算中の事業年度についても消費税の申告が必要です。
清算中に財産を売却すると、その売却にも消費税がかかります。
インボイス制度に登録している会社は、登録の取消手続きも必要です。
▼ 無料相談はこちらから
税務署などへの届出
申告とは別に、解散したことと清算が終わったことを届け出ます。
税務署には、解散の登記後に異動届出書を出し、異動事項に「解散」と記載して登記事項証明書を添付します。
清算結了の登記後にも、異動届出書で「清算結了」を届け出ます。
同じ届出を、都道府県税事務所と市区町村にも出します。
東京23区内の会社は都税事務所だけで済みます。
給与を払っていた会社は、給与支払事務所等の廃止届出書を税務署に出します。
消費税の課税事業者は、事業廃止届出書を出します。
社会保険に入っていた会社は、年金事務所に適用事業所全喪届を、雇用保険があればハローワークにも届出が必要です。
届出に費用はかかりませんが、出し忘れると納付書や申告書の案内が届き続けます。
株主にも税金がかかることがある
残余財産を株主に分配したとき、株主が出資した金額を超える部分は配当とみなされます(所得税法第25条)。
たとえば資本金100万円の会社に残余財産が300万円あれば、差額の200万円が株主の配当所得になります。
会社は分配のときに、この200万円に対して所得税を源泉徴収して納付します。
株主が社長本人であれば、翌年の確定申告で配当所得として申告します。
残余財産が資本金を下回る場合は、配当とみなされる部分はなく、株主に税金はかかりません。
多くの小さな会社はこちらに当てはまります。
全体のスケジュールと費用
最短の流れは次のとおりです。
株主総会で解散を決議し、2週間以内に解散と清算人の登記をします(会社法第926条、第928条)。
官報に債権者向けの公告を出し、2か月以上の申出期間を置きます(会社法第499条)。
解散の日から2か月以内に、解散事業年度の申告をします。
公告期間が終わったら、債務を返し、財産を現金に換え、残余財産を確定させます。
確定の日から1か月以内に最後の申告をし、株主に分配します。
決算報告を株主総会で承認し(会社法第507条)、2週間以内に清算結了の登記をします(会社法第929条)。
公告の2か月が必ずかかるため、全体で最短3か月程度、通常は4か月から6か月です。
実費は、登記の登録免許税が解散3万円、清算人の選任9千円、清算結了2千円の合計4万1千円、官報の公告が4万円前後で、合わせて8万円前後です。
これに、登記を司法書士に頼む場合の報酬と、税務申告を税理士に頼む場合の報酬が加わります。
当事務所では、解散から清算結了までの税務申告と届出をまとめてお引き受けしています。
司法書士との連携も当事務所で行いますので、お客様が複数の専門家に個別に連絡する必要はありません。
清算が終わったあとに残ること
清算結了の登記から10年間、清算人は会社の帳簿と重要な資料を保存しなければなりません(会社法第508条)。
会社が消えても、税務署の調査が及ぶ期間は残ります。
決算書、申告書、通帳、契約書は、段ボール1箱にまとめて保管しておいてください。
また、清算結了後に会社名義の財産や債務が見つかった場合、清算は終わっていなかったことになり、手続きをやり直すことになります。
解散前に、会社名義の預金口座、保険、車両、契約を一覧にしておくことが、やり直しを防ぐ一番の方法です。
当事務所の経験から
顧問先に、暗号資産の運用のために設立した法人を、FTXの破綻のあとに畳んだ会社があります。
その社長が後で口にされたのは、手続きの順番を間違えると時間も費用も倍かかるということでした。
特に、残余財産の確定と最後の申告と分配の日取りは、先に全体の予定を組んでから動かないと、申告期限を過ぎてしまいます
その経験があるため、当事務所では解散を決めた時点で清算結了までの予定をお客様と共有してから手続きを始めています。
なお、解散する前に、本当に解散が最善かを一度確認してください。
再開の見込みがあるなら休眠という選択肢があります。
申告していない年度が残っている会社は、先に申告の空白を埋める必要があり、それをしないと清算結了まで進めません。
どの道を選ぶかも含めて、ご相談いただけます。
まとめ
会社を解散すると、法人税の申告は解散事業年度、清算事業年度、残余財産確定事業年度の最大3回必要です。
最後の申告だけは期限が1か月で、分配を先にするならその前日までです。
役員借入金の帳消しは会社の利益になりますが、残余財産がない見込みなら期限切れの赤字で相殺できます。
均等割は清算結了まで続くため、手続きは早く終えるほど安く済みます。
実費は8万円前後、期間は最短3か月です。
東京都世田谷区の大見税理士事務所では、解散から清算結了までの税務申告と届出、司法書士との連携までまとめて対応しています。
会社をたたむと決めた方も、迷っている方も、まずは現状をお聞かせください。
▼ 無料相談はこちらから
用語集
解散
株主総会などで会社の事業をやめると決めることです。解散しただけでは会社は消えません。
清算
解散した会社の財産を整理し、債務を返し、残りを株主に分けて会社を消滅させる手続きです。
清算人
清算の手続きを行う人です。特に決めなければ、それまでの取締役がなります。
残余財産
債務をすべて返し、財産を現金に換えたあとに残る財産です。株主に分配されます。
残余財産の確定
残余財産の金額が確定した日です。この日で最後の事業年度が終わり、1か月以内に申告します。
役員借入金
社長などの役員が会社に貸しているお金です。会社から見ると借金です。
債務免除益
借金を返さなくてよくなったときに生じる会社の利益です。法人税の課税対象になります。
期限切れ欠損金
発生から10年を過ぎて、通常は使えなくなった過去の赤字です。解散した会社で残余財産がない見込みの場合に限り、使うことができます。
みなし配当
残余財産の分配のうち、株主が出資した金額を超える部分です。配当として課税されます。
均等割
法人住民税のうち、所得の有無にかかわらず会社の規模に応じてかかる部分です。清算中も課税されます。
清算結了
清算の手続きがすべて終わり、登記をして会社が消滅することです。
出典
- 会社法第471条(解散の事由)、第475条(清算の開始原因)、第478条(清算人の就任)、第499条(債権者に対する公告等)、第507条(決算報告)、第508条(帳簿資料の保存)、第926条(解散の登記)、第928条(清算人の登記)、第929条(清算結了の登記)
- 法人税法第14条(事業年度の特例)、第59条(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)、第74条(確定申告)
- 所得税法第25条(配当等とみなす金額)
- 登録免許税法 別表第一(商業登記の登録免許税)
- 国税庁「清算中の法人の確定申告」
大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士
執筆者は税理士 大見光男(税理士登録番号 156268、東京税理士会玉川支部所属)。
相続・暗号資産・法人税務を専門分野とし、13年以上のキャリアを有しています。これまで著書・セミナー・取材などを通じて専門知識を発信してきました。
本記事は、制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。細部の要件や例外については割愛しております。個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、詳細はお問い合わせください(2026年10月現在の法令に基づく解説です)。

