休眠会社を放置するとどうなる?解散との違いと判断基準を税理士が解説|コラム

2026.10.09

税務顧問

休眠会社を放置するとどうなる?解散との違いと判断基準を税理士が解説

WRITER

大見光男

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大見 光男

税理士

大見光男

会計事務所で、主に中小の法人と医業、不動産所得がある方を担当し、節税対策や申告書の作成に従事。2017年に税理士登録、大見光男税理士事務所を開業。

執筆:大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士。

この記事の要点は4つです。
休眠にしても会社は消えず、法人税の申告義務と住民税の均等割(年7万円)は続きます。
申告を2期続けて出さないと青色申告が取り消され、登記を12年放置すると解散したものとみなされます。
均等割の免除は自治体の判断であり、届出を出せば必ず免除されるとは言えません。
数年以内に再開する見込みがなければ、解散して清算まで終えるほうが結果的に安く済むことが多いです。

休眠会社とは何か

事業をやめた会社を「休眠会社」と呼びますが、これは税務や会計の正式な用語ではありません。
会社法では、最後の登記から12年が経過した株式会社を休眠会社と定義しています(会社法第472条)。
一般に使われる「休眠」は、税務署や都道府県税事務所に休業の届出を出し、事業活動を止めた状態を指します。
ここで大切なのは、休業の届出を出しても会社の登記は何も変わらないという点です。
法務局の登記簿上は、会社は営業中の会社と同じ扱いのまま存在し続けます。
つまり休眠とは、会社を眠らせているだけで、会社そのものがなくなるわけではありません。

休眠中も続く3つの義務

法人税の申告義務

法人税法は、すべての内国法人に対し、事業年度が終わった日から2か月以内に確定申告書を提出することを求めています(法人税法第74条)。
売上がゼロでも、事業を止めていても、この義務はなくなりません。
休業の届出を出すと申告が不要になると誤解している方が多いのですが、届出はあくまで「事業を行っていません」と伝えるものに過ぎません。
税務署からの申告書の送付が止まることはあっても、申告義務そのものは残ります。

住民税の均等割

法人住民税の均等割は、所得がなくても会社が存在する限り課税される税金です(地方税法第52条、第312条)。
東京23区内に本店があり、資本金1,000万円以下、従業員50人以下の会社であれば、年額7万円です。
事業を止めていても、事務所の所在地がある限り、この7万円は原則として毎年発生します。
10年休眠すれば70万円、それだけの費用がかかる計算になります。

役員変更の登記

取締役の任期は原則2年で、株式を自由に譲渡できない会社であれば、定款で最長10年まで延ばせます(会社法第332条)。
任期が切れたら、同じ人が続投する場合でも改めて選び直し、2週間以内に登記しなければなりません(会社法第915条)。
この登記を怠ると、100万円以下の過料(行政上の罰金)の対象になります(会社法第976条)。
休眠中は会社のことを忘れがちで、気づいたら任期が切れて何年も経っていたという相談は珍しくありません。

均等割は免除されるのか

インターネット上には「休業届を出せば均等割が免除される」という解説が多くあります。
しかし、免除するかどうかは各自治体の判断であり、全国一律の制度ではありません。
東京都の場合、条例による均等割の免除は、収益事業を行わないNPO法人や公益法人などが対象として示されており、株式会社や合同会社の休業が免除対象として明示されているわけではありません。
一方で、事業を全く行っていない旨の申告や異動届出書を都税事務所に提出することで、実務上は課税を見合わせてもらえたという事例があることも事実です。
当事務所の立場としては、「届出を出せば必ず免除される」とは言えないとお伝えしています。
休眠を考えている方は、本店所在地を管轄する都道府県税事務所と市区町村に、免除や減免の扱いを事前に確認してください。
免除されない前提で年7万円の負担を見込んでおくのが、安全な考え方です。

放置すると何が起きるか

青色申告が取り消される

申告書を期限までに提出しないことは、青色申告の承認の取消事由です(法人税法第127条第1項第4号)。
国税庁の運用では、2事業年度連続で期限内に申告しなかった場合に取り消されます。
青色申告が取り消されると、赤字を翌年以降に繰り越す仕組み(欠損金の繰越控除)が使えなくなります。
事業を再開したときに、休眠前の赤字と再開後の黒字を相殺できなくなるため、再開を考えている会社にとっては大きな損失です。
一度取り消されると、すくなくとも1年間は再申請ができません。

当事務所では休眠1年目でご相談を受けた会社がありました。事業の再開は予定していたため、すぐ期限後申告を勧めました。ちょうど次の申告期限の直前だったので、2年連続の期限後申告を回避し、青色申告を維持できました。もともとは事業の再開見込みがなかったため無申告だったのですが社長の状況変化で事業再開となったため、このままでは大きな痛手を負うところでした。

1年後の見通しは立てやすくても、3年後となると難しいものです。少しでも事業再開の見込みがある場合は青色申告を維持するためにも申告は続けることをお勧めします。

 

12年でみなし解散になる

最後の登記から12年が経過した株式会社は、法務大臣の公告から2か月以内に「事業を廃止していない」旨の届出をしないと、解散したものとみなされます(会社法第472条)。
法務局は毎年この整理作業を行っており、該当する会社には通知が送られます。
ただし、登記簿上の本店所在地に誰もいなければ、通知は届きません。
気づかないうちに解散したことにされ、取締役は全員退任し、その後3年以内に株主総会で継続を決議しなければ、会社を元に戻すことはできなくなります。

無申告の期間が積み上がる

申告をしないまま年数が過ぎると、あとから整理しようとしたときに、未申告の事業年度すべてを申告し直す必要が出てきます。
解散して清算するには、最終事業年度までの申告を済ませることが前提です。
5年分、10年分の決算書をまとめて作る費用は、毎年きちんと申告してきた場合の費用を大きく上回ります。
放置は問題を先送りするだけで、消すことにはなりません。

休眠と解散、どちらを選ぶべきか

判断の軸は一つで、「数年以内に会社を使う見込みがあるか」です。
再開の見込みがあるなら、休眠が向いています。
許認可や取引口座、過去の赤字を残したまま温存できるからです。
一方、再開の見込みがないなら、解散して清算まで終えるほうが得です。
解散と清算の登記にかかる実費は登録免許税などで4万円程度、官報への公告費用を含めても8万円程度です。
休眠で2年以上均等割を払い続けるなら、解散費用のほうが安くなります。
手続きの流れと費用は、会社をたたむときの手続きと費用の記事で詳しく解説しています。

休眠が向いているのは、次のような会社です。
取得に時間のかかる許認可を持っている会社。
再開時に使いたい繰越欠損金が残っている会社。
相続や事業承継を控えており、1〜2年以内に方針が決まる会社。
これに当てはまらないなら、解散を前提に考えるのが合理的です。

休眠にする手続き

休眠の手続きは、届出を3か所に出すだけです。
税務署には異動届出書を提出し、異動事項の欄に「休業」と記載します。
都道府県税事務所と市区町村にも、それぞれ異動届出書を提出します。
東京23区内の会社であれば、都税事務所への提出だけで済みます。
給与を支払っていた会社は、給与支払事務所等の廃止届出書も税務署に出しておくと、源泉所得税の納付書が送られてこなくなります。
届出に費用はかかりません。
ただし、繰り返しになりますが、届出を出しても法人税と住民税の申告義務は残ります。

休眠中は最低限の申告を続ける

休眠中の会社の申告は、売上も経費もほとんどないため、内容は簡単です。
それでも申告を続けることで、青色申告を維持し、繰越欠損金を守り、再開や解散のときに困らない状態を保てます。
当事務所では、休眠中の会社向けに年額98,000円の顧問プランを用意しています。
法人税と住民税の申告、役員任期の管理、みなし解散の通知への対応まで含めて、会社を眠らせたまま維持するために必要なことを一式でお引き受けするプランです。
均等割の7万円と合わせても、年間17万円弱で会社を安全に維持できます。
解散を選ぶ場合も、最終事業年度までの申告と清算の申告を含めてご相談いただけます。

当事務所にも、「何年か前に休業の届出を出したので終わったと思っていた」という方からのご相談が届きます。
よく聞いてみると、都税事務所からの納付書が毎年届き続けていたり、青色申告がすでに取り消されていたり、役員の任期が5年以上前に切れていたりします。
そこから解散に向けて動くと、未申告の年度を全部さかのぼって申告することになり、休眠を決めたときに想定していた何倍もの費用がかかります。
休眠は「何もしなくてよい状態」ではなく、「最低限のことだけ続ける状態」だと理解しておくことが、後悔しないための一番の近道です。

まとめ

休眠会社を放置しても、会社は消えません。
法人税の申告義務と年7万円の均等割は続き、申告を2期怠れば青色申告が取り消され、登記を12年放置すれば解散したものとみなされます。
均等割の免除は自治体の判断であり、届出を出せば必ず免除されるわけではありません。
数年以内に再開する見込みがあるなら休眠、ないなら解散が基本の判断です。
どちらを選ぶにしても、最終事業年度までの申告を済ませておくことが、あとで困らないための条件になります。
休眠にしたまま何年も経ってしまった会社も、今から整理すれば費用は最小限で済みます。
東京都世田谷区の大見税理士事務所では、休眠会社の維持から解散・清算の申告まで対応しています。
まずは現状をお聞かせください。

用語集

休眠会社
一般には事業を止めて休業の届出を出した会社を指します。会社法上は、最後の登記から12年が経過した株式会社のことです。

均等割
法人住民税のうち、所得の有無にかかわらず会社の規模に応じて一律にかかる部分です。東京23区の小規模な会社で年額7万円です。

みなし解散
最後の登記から12年経過した株式会社が、法務大臣の公告から2か月以内に届出をしなかった場合に、解散したものとみなされる制度です。

青色申告の承認の取消し
期限内に申告しないなどの理由で、青色申告の特典(赤字の繰越など)を使えなくされることです。取消後1年間は再申請できません。

繰越欠損金
過去の赤字を翌年以降の黒字と相殺できる仕組みです。青色申告の会社は最長10年間繰り越せます。

異動届出書
会社の住所や事業の状況などに変更があったときに税務署や自治体に出す届出書です。休業もこの書類で届け出ます。

過料
法律上の義務を怠った場合に課される行政上の金銭的な制裁です。刑罰ではないため前科にはなりません。

出典

  • 会社法第332条(取締役の任期)、第472条(休眠会社のみなし解散)、第915条(変更の登記)、第976条(過料に処すべき行為)
  • 法人税法第74条(確定申告)、第127条(青色申告の承認の取消し)
  • 地方税法第52条、第312条(法人住民税の均等割)
  • 東京都主税局「法人事業税・法人都民税」
  • 法務省「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」

大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士

執筆者は税理士 大見光男(税理士登録番号 156268、東京税理士会玉川支部所属)。
相続・暗号資産・法人税務を専門分野とし、13年以上のキャリアを有しています。これまで著書・セミナー・取材などを通じて専門知識を発信してきました。

本記事は、制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。細部の要件や例外については割愛しております。個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、詳細はお問い合わせください(2026年10月現在の法令に基づく解説です)。

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