何年も申告していない会社はどうすればいい?放置のリスクと今からやるべきこと【税理士解説】|コラム
コラム
2026.10.09
税務顧問
何年も申告していない会社はどうすればいい?放置のリスクと今からやるべきことを税理士が解説
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会計事務所で、主に中小の法人と医業、不動産所得がある方を担当し、節税対策や申告書の作成に従事。2017年に税理士登録、大見光男税理士事務所を開業。
執筆:大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士。
この記事の要点は4つです。
会社の申告を出していない期間が何年あっても、税務署は原則5年、悪質と判断すれば7年さかのぼって課税できます。
税務署に指摘されてからの申告は無申告加算税が最大30%、隠したと判断されれば40%の重加算税ですが、自分から先に申告すれば5%で済みます。
無申告の会社への税務調査は、法人税で前年比18%増、消費税で19%増と、はっきり増えています。
今からやることは、通帳と請求書を集めて、古い年度から順に申告書を作り、出せるものから出していくことです。
申告していない会社は意外に多い
会社を作ったものの、売上が立たないまま放置している。
前の税理士と連絡が取れなくなり、そのまま何年も過ぎた。
事業はやめたが、解散の手続きをしないまま申告も止めてしまった。
当事務所に届く相談の中で、こうした会社は珍しくありません。
多くの方が「どうにかしなければ」と思いながら、何から手をつければよいかわからず、年数だけが積み上がっています。
この記事では、放置すると何が起きるのか、そして今から何をすればよいのかを、順番に説明します。
放置すると起きること
5年、悪質なら7年さかのぼって課税される
税務署が税金を決める(更正や決定を行う)ことができる期間は、申告期限から原則5年です(国税通則法第70条)。
帳簿を偽るなどの不正があった場合は7年に延びます。
つまり、10年間申告していなくても、税務署が実際に課税してくるのは直近5年分、場合によっては7年分です。
これは「古い年度は逃げ切れる」という意味ではなく、「今後も毎年、新しい年度が5年の範囲に入り続ける」という意味です。
放置している限り、課税される可能性のある期間は消えません。
本来の税金に加算税と延滞税が上乗せされる
申告期限を過ぎてから申告すると、本来の税金に無申告加算税が上乗せされます(国税通則法第66条)。
税務署の調査を受けてから申告した場合の割合は、税額50万円までが15%、50万円を超え300万円までが20%、300万円を超える部分が30%です。
売上や経費を意図的に隠していたと判断されると、無申告加算税の代わりに40%の重加算税がかかります(国税通則法第68条)。
さらに、納付が遅れた日数に応じて延滞税がかかります。
延滞税の割合は、2026年の場合、納期限から2か月までは年2.8%、それを過ぎると年9.1%です。
5年前の税金であれば、本来の税額の3割から4割が延滞税だけで上乗せされる計算になります。
住民税の均等割も止まらない
法人住民税の均等割は、赤字でも売上ゼロでも、会社がある限り毎年かかります。
東京23区内の小さな会社であれば年額7万円です。
申告を出していなくても、都道府県税事務所や市区町村は登記情報をもとに課税できます。
あとからまとめて納付書が届き、5年分で35万円、延滞金つきという形で現れることがあります。
青色申告が取り消され、赤字を使えなくなる
申告書を2事業年度続けて期限内に出さないと、青色申告の承認が取り消されます(法人税法第127条)。
青色申告でなくなると、過去の赤字を翌年以降の黒字と相殺する仕組み(欠損金の繰越控除)が使えなくなります(法人税法第57条)。
設立当初に赤字を出していた会社が、何年か後に黒字になったとき、本来なら使えたはずの赤字が消えているということが起きます。
取消後は少なくとも1年間、再申請ができません。
帳簿がないと税務署の推計で課税される
帳簿や領収書が残っていない場合、税務署は銀行口座の入金や同業他社の利益率などから所得を推計して課税できます(法人税法第131条)。
推計は納税者に有利に計算されるものではありません。
経費の証拠がなければ経費として認められず、入金がすべて売上として扱われることもあります。
記録を残していないことは、そのまま不利に働きます。
融資も許認可も止まる
申告をしていない会社は、決算書も納税証明書も出せません。
金融機関の融資、補助金の申請、建設業などの許認可の更新は、いずれもこれらの書類が前提です。
事業を再開しようとしたとき、申告の空白期間が最初の壁になります。
無申告の会社への調査は増えている
国税庁が公表した令和6事務年度(2024年7月から2025年6月)の調査実績では、無申告の会社に対する実地調査は、法人税で2,089件と前年より18%増え、追徴税額は約120億円でした。
消費税では1,767件と前年より19%増え、追徴税額は約235億円と前年の2.3倍に跳ね上がっています。
法人税の調査全体の件数は前年より7%減っているにもかかわらず、無申告の会社への調査だけが増えているのです。
税務署は申告している会社より、申告していない会社に力を入れています。
2026年9月からは国税庁の新しいシステム(KSK2)が本格稼働し、登記情報や取引先の支払調書、銀行口座の情報を突き合わせて無申告の会社を見つける精度が上がっています。
「売上が小さいから見つからない」という考えは、もう通用しません。
自分から申告すれば負担は大きく減る
ここまで読むと厳しい話ばかりですが、重要なのはここからです。
税務署から調査の連絡が来る前に、自分から期限後申告をすれば、無申告加算税は一律5%に下がります(国税通則法第66条)。
調査を受けてから申告した場合の15%から30%と比べると、差は歴然です。
たとえば5年分で法人税が合計300万円だった場合、自主申告なら加算税は15万円、調査後なら約58万円、隠していたと判断されれば120万円です。
同じ税金を払うにしても、先に動くか後に動くかで、100万円以上の差がつきます。
重加算税は「隠した」ことに対する罰なので、自分から申告した場合には基本的にかかりません。
放置している会社にとって、自主的な期限後申告は、最も安く問題を終わらせる方法です。
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今からやるべきことの手順
資料を集める
最初にやることは、会社名義の通帳と、残っている請求書や領収書を集めることです。
通帳が手元になければ、銀行で取引明細を取り寄せます。
多くの銀行は10年分の明細を発行できます。
領収書が残っていなくても、通帳の出金記録とクレジットカードの明細があれば、経費の大半は再現できます。
「資料がないから申告できない」と考える方が多いのですが、通帳さえあれば申告書は作れます。
古い年度から順に決算を組む
申告していない年度が複数ある場合、一番古い年度から順に決算書を作ります。
前の年度の期末の数字が次の年度の期首になるため、順番を飛ばすことはできません。
5年より前の年度は、税務署が課税できる期間を過ぎているため、申告を求められないことが一般的です。
ただし、繰越欠損金をつなげるために古い年度の申告が必要になる場合もあるので、どこから作るかは状況を見て判断します。
消費税の申告が必要かを確認する
2年前の売上(基準期間の課税売上高)が1,000万円を超えている年度は、消費税の申告も必要です(消費税法第9条)。
無申告の会社への調査で追徴税額が大きく伸びているのは消費税です。
消費税は赤字でも納税額が出ることが多く、法人税より負担が重くなることがあります。
インボイス制度に登録している会社は、売上にかかわらず申告が必要です。
申告書を出し、納付の相談をする
決算書ができたら、法人税、地方税、必要なら消費税の申告書を提出します。
納税額が一度に払えない場合は、税務署に分割納付の相談ができます。
一定の要件を満たせば、換価の猶予という制度で原則1年以内の分割納付が認められます。
払えないから申告しない、ではなく、先に申告してから納付を相談するのが正しい順番です。
今後の方針を決める
申告が追いついたら、会社をどうするかを決めます。
事業を続けるなら、毎年の申告を止めないことが何より大切です。
事業をやめるなら、解散と清算の手続きに進みます。
いったん止めて様子を見るなら、休眠という選択肢もありますが、休眠中も申告は必要です。
どの道を選ぶにしても、申告の空白を埋めることが出発点になります。
当事務所での対応
当事務所では、何年分かまとめて申告する案件を定期的にお受けしています。
通帳の取り寄せから、決算書の作成、申告書の提出、納付の相談まで、まとめて対応します。
過去の年度の申告が終わったあとは、年額198,000円の格安税務顧問プランで、毎年の決算と申告を続けていくことができます。
休眠させる場合は、年額98,000円の休眠会社向けプランで、青色申告を維持したまま最低限の申告を続けられます。
税務調査が入ってからの対応も可能ですが、費用も精神的な負担も、自分から動いたほうがはるかに軽く済みます。
税務調査の実際の流れは、税務調査で5年分さかのぼられた実例の記事で詳しく書いています。
相談に来られる方の多くは、「怒られるのではないか」「とんでもない金額を請求されるのではないか」と不安を抱えて来られます。
しかし実際に数字を組んでみると、売上が小さい会社では税額そのものがほとんど出ないことも多く、均等割と加算税を合わせても想像していたより小さな金額で終わることが少なくありません。
数字がわからないから怖いのであって、数字がわかれば対処できます。
まずは通帳を持ってご相談ください。
まとめ
何年も申告していない会社を放置しても、課税できる期間は消えず、加算税と延滞税が増え続けます。
無申告の会社への税務調査は前年比2割増で、2026年9月からは新しいシステムで発見の精度も上がっています。
税務署に見つかる前に自分から申告すれば、無申告加算税は5%で済み、重加算税の心配もなくなります。
やることは、通帳を集めて、古い年度から順に決算を組み、申告書を出して、納付を相談することです。
資料が足りなくても、通帳さえあれば申告はできます。
東京都世田谷区の大見税理士事務所では、無申告の会社の期限後申告から、その後の顧問、休眠、解散まで一貫して対応しています。
何年分あっても、まずは現状をお聞かせください。
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用語集
期限後申告
申告期限を過ぎてから自分で申告書を提出することです。税務署に指摘される前に出せば、加算税が軽くなります。
無申告加算税
期限内に申告しなかったことに対する罰金にあたる税金です。自主的な申告なら5%、調査後は15%から30%です。
重加算税
売上や経費を意図的に隠したり偽ったりした場合に、無申告加算税の代わりにかかる税金です。無申告の場合は40%です。
延滞税
納付が遅れた日数に応じてかかる利息にあたる税金です。2026年は納期限から2か月まで年2.8%、その後は年9.1%です。
更正・決定
税務署が税額を決める手続きです。申告がある場合に直すのが更正、申告がない場合に決めるのが決定です。
均等割
法人住民税のうち、所得の有無にかかわらず会社の規模に応じてかかる部分です。東京23区の小さな会社で年額7万円です。
繰越欠損金
過去の赤字を翌年以降の黒字と相殺できる仕組みです。青色申告の会社だけが使え、最長10年間繰り越せます。
推計課税
帳簿がない場合に、税務署が銀行の入金や同業者の数値から所得を見積もって課税することです。
換価の猶予
一度に納付すると事業の継続が難しい場合に、税務署に申請して原則1年以内の分割納付を認めてもらう制度です。
基準期間
消費税の納税義務を判定するための期間で、会社の場合は2事業年度前のことです。この期間の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の申告が必要です。
出典
- 国税通則法第66条(無申告加算税)、第68条(重加算税)、第70条(国税の更正、決定等の期間制限)
- 法人税法第57条(欠損金の繰越し)、第127条(青色申告の承認の取消し)、第131条(推計による更正又は決定)
- 消費税法第9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」(2025年11月)
- 国税庁「延滞税の割合」
- 国税庁「換価の猶予」
大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士
執筆者は税理士 大見光男(税理士登録番号 156268、東京税理士会玉川支部所属)。
相続・暗号資産・法人税務を専門分野とし、13年以上のキャリアを有しています。これまで著書・セミナー・取材などを通じて専門知識を発信してきました。
本記事は、制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。細部の要件や例外については割愛しております。個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、詳細はお問い合わせください(2026年10月現在の法令に基づく解説です)。

