仮想通貨の節税は年内が勝負|2026年末にやるべきことと分離課税への備えを税理士が解説|コラム
コラム
2026.09.12
仮想通貨
仮想通貨の節税は年内が勝負|2026年末にやるべきことと分離課税への備えを税理士が解説
執筆:大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士。
この記事の要点を先にお伝えします。
仮想通貨の税金は12月31日時点の損益で決まるため、節税できる期間は年内までです。
使える手段は、含み損の活用、20万円ルール、経費の整理、所得控除の4つ。
さらに2026年末は、成立した申告分離課税への移行と、その前に急増している税務調査という2つの論点が加わりました。
以下で、年内にやるべきことを順に解説します。
仮想通貨で利益が出た年の3月、納税額を見て青ざめる。
これは毎年、当事務所に寄せられるご相談で最も多いパターンです。
しかし残酷なことに、3月の時点でできることはほとんど残っていません。
仮想通貨の税金は、その年の12月31日までの取引で確定してしまうからです。
東京都世田谷区の大見税理士事務所が、年内にできる対策を解説します。
なぜ年内なのか:12月31日で全部が決まる
個人の所得税は、1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して計算されます。
仮想通貨の利益も同じで、12月31日を過ぎた時点で、その年の所得は確定します。
年が明けてからできるのは、確定した数字を正確に計算して申告することだけです。
節税という言葉が使えるのは、利益や損失をどう確定させるかを選べる12月31日までなのです。
この記事で紹介する対策は、すべて年内に実行する必要があります。
対策1:含み損のある銘柄を年内に売却する
最も効果が大きいのがこれです。
仮想通貨の利益と損失は、同じ年の中であれば相殺できます。
たとえば、ビットコインで300万円の利益が確定していて、別の銘柄に100万円の含み損があるとします。
この含み損のある銘柄を年内に売却すれば、その年の所得は200万円に下がります。
持ったままにしておくと、含み損は税金の計算に一切反映されません。
売却後にその銘柄を持ち続けたい場合は、買い戻すことも可能です。
ただし、買い戻した価格が新しい取得価額になるため、将来売るときの利益はその分大きくなります。
税金を将来に先送りしている面があることは、理解しておいてください。
注意点もあります。
仮想通貨の損失は、給与所得や事業所得と相殺することはできません(『所得税法69条』)。
相殺できるのは、同じ年の雑所得の中だけです。
また、引ききれなかった損失を翌年に繰り越すこともできません。
つまり、利益が出ている年に損失をぶつけなければ、その損失は使い道がないまま消えてしまいます。
対策2:給与所得者は20万円ルールを意識する
会社から給料をもらっている方は、給与以外の所得が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要です(『所得税法121条』)。
年末の時点で利益が20万円をわずかに超えそうな場合、含み損の売却で20万円以下に調整するという判断もあり得ます。
ただし、所得税の申告が不要でも、住民税の申告は別途必要です。
申告不要だから何もしなくてよい、という意味ではない点に注意してください。
対策3:必要経費を年内に整理する
仮想通貨の利益から差し引ける経費は、その利益を得るために直接必要だったものに限られます。
代表的なのは、取引所に支払った売買手数料、送金手数料、DeFiのガス代です。
損益計算ツールの利用料や、税理士への報酬も対象になります。
ハードウェアウォレットの購入費、取引に使うパソコンの費用も、取引に使った割合の分だけ計上できます。
逆に、生活費との区別がつかないものは認められません。
自宅の電気代を全額入れる、といった処理は税務調査で否認される典型です。
使った割合で按分する、という考え方を守ってください。
領収書やクレジットカードの明細は、年内のうちに集めておきましょう。
年が明けると、どの支出が何のためだったか思い出せなくなります。
対策4:ふるさと納税とiDeCoは仮想通貨と相性が良い
意外と見落とされているのがこれです。
仮想通貨の利益は、給与などと合算して税率が決まる総合課税です。
そのため、所得が増えるほど税率が上がり、所得控除の効果も大きくなります。
ふるさと納税の控除上限額は所得に応じて増えるため、仮想通貨で大きな利益が出た年は、上限額も上がります。
iDeCoの掛金は全額が所得控除になるため、税率が高い年ほど節税効果が大きくなります。
どちらも12月31日が期限です。
ふるさと納税は年末が駆け込みで混雑するため、早めに手続きしてください。

2026年末の新論点:申告分離課税への移行が決まりました
ここからが、今年ならではの話です。
令和8年度の税制改正で、暗号資産の課税方式を大きく変える制度が成立しました。
一定の暗号資産の譲渡による所得について、上場株式と同じ申告分離課税(所得税15%・住民税5%、付加税を含めて20.315%)を適用する制度です(『租税特別措置法38条の2』)。
あわせて、損失を翌年以後3年間繰り越せる制度も創設されました(『同法38条の3』)。
最高55%から20%台へ、という大きな変化です。
ただし、すぐに全員が20%になるわけではありません。
正確に理解しておくべき点が3つあります。
1つ目は、開始時期がまだ確定していないことです。
この制度は、金融商品取引法などの改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡から適用されます。
その改正法は2026年7月に公布されましたが、施行日は公布から1年以内に政令で定めるとされているため、2027年1月開始と2028年1月開始の両方があり得ます。
「2028年から」と断定している解説もありますが、現時点では政令待ちです。
2つ目は、対象が限られることです。
分離課税の対象は「特定暗号資産」を登録された業者を通じて譲渡した場合に限られます。
海外の取引所での売買、分散型取引所での交換、個人間の取引は対象外で、これまでどおり総合課税です。
どの銘柄をどこで売るかで、税率がまったく変わることになります。
3つ目は、損益通算のルールは変わらないことです。
分離課税になっても、給与所得などと相殺することはできません。
また、3年間の繰越しが使えるのは制度が始まった後に生じた損失で、それ以前の損失は繰り越せません。
改正前のいま、税務調査が明らかに増えています
ここからは、暗号資産の税務を専門にしている税理士としての実感をお伝えします。
ここ最近、暗号資産の税務調査に関するご依頼が急激に増えています。
そして、ご相談に来られる方には共通点があります。
全員が無申告で、全員が5年分まとめて調査を受けているということです。
統計上の話ではなく、当事務所が現に立ち会っている件数として、はっきりと増加しています。
背景は推測になりますが、制度の移行期であることと無関係ではないと考えています。
分離課税に移行すれば、取引所から税務署へ年間の取引報告書が提出される仕組みが整います。
一方、これまでの総合課税の年分については、税務署が課税できる期間に限りがあります。
新しい体制に移る前に、過去の年分を整理しておこうという動きが強まっているように見えます。
実際の調査がどう進むのか、5年分の負担がどれほどのものになるかは、仮想通貨の税務調査の現場を実体験から解説した記事に詳しく書いています。
まだ調査が来ていない方へ:いまが一番動きやすい時期です
裏を返せば、調査の連絡がまだ来ていない方にとって、いまは最も条件の良い時期だということです。
やるべきことは2つあります。
1つ目は、この記事で紹介した年内の対策です。
今年すでに利益が確定していて、含み損を抱えた銘柄をお持ちなら、年内に実現させることで税負担を合法的に減らせます。
これは調査とは関係なく、単純に今年の税額が下がるという話です。
12月31日を過ぎると、この選択肢は消えます。
2つ目は、自分の所得を正確に計算しておくことです。
当事務所のご相談で驚くほど多いのが、自分がいくら儲かっているのか把握できていないというケースです。
取引所をいくつも使い、コイン同士の交換を繰り返し、もう自分では追えなくなっている。
その状態のまま、いつか調査が来るかもしれないという不安だけを抱えて過ごしている方が本当に多いのです。
先に計算してしまえば、その不安からは解放されます。
計算した結果、思ったより利益が出ていなかった、申告が必要な水準ではなかった、と判明することも珍しくありません。
そうであれば、それが一番の安心材料になります。
逆に、申告すべき利益があったとわかった場合も、いま気づいたことに価値があります。
税務署から調査の連絡が来る前に自分から申告すれば、上乗せされる無申告加算税は原則5%です(『国税通則法66条』)。
調査を受けてからでは15%から30%になります。
同じ申告をするのに、動くタイミングだけで負担がまったく変わるのです。
過去に申告していない年がある方は、仮想通貨の無申告はなぜ危険かを解説した記事もあわせてお読みください。
当事務所では、国内・海外の取引所やウォレットに対応した損益計算の代行をお受けしています。
取引履歴を送っていただければ、1年分でも複数年分でも、正確な所得金額を算出します。
計算だけのご依頼も可能です。
まずは自分の数字を知る。
そこからでないと、対策も申告も始まりません。
料金の目安は仮想通貨の確定申告の税理士費用を解説した記事に記載しています。
▼ 損益計算のご依頼・年内の対策のご相談はこちらから
「税率が下がるまで待つ」は正しい判断か
分離課税の話を知ると、多くの方が同じことを考えます。
税率が下がるまで売らずに待てばいいのではないか、と。
当事務所の考えをお伝えします。
理屈としては正しいのですが、待つことには2つのリスクがあります。
ひとつは、相場の変動です。
税率が55%から20%に下がっても、その間に価格が半分になれば、手元に残る金額は減ります。
税率の差より、価格変動のほうが金額へのインパクトが大きいことは珍しくありません。
もうひとつは、開始時期が確定していないことです。
1年待つつもりが2年になる可能性があります。
いま確実にできるのは、制度が始まったときに使える状態を整えておくことです。
取得価額と取得日の記録を正確に残し、使っている取引所が登録業者になるかを確認しておく。
この準備をしておけば、どちらの開始年になっても対応できます。
取引履歴の整理の仕方は、確定申告の準備を解説した記事をご覧ください。
法人化を検討している方への注意
この改正は、法人化の判断にも影響します。
これまで法人化が有利とされてきた最大の理由は、個人の最高55%と法人税率の差でした。
個人の税率が20.315%まで下がる可能性がある以上、この損益分岐点は動きます。
法人には維持コストがかかり、決算のたびに含み益へ課税される仕組みもあるため、判断はより慎重であるべきです。
法人化の基本的な考え方は暗号資産で稼いだら法人化すべきかを解説した記事にまとめていますが、いま法人化を検討されている方は、この改正を踏まえた試算が必要です。
当事務所では、改正後の税率も含めた比較を無料相談でお出ししています。
やってはいけないこと
最後に、節税と脱税の線引きをはっきりさせておきます。
利益を申告しない、海外の取引所の分だけ除外する、取引履歴を改ざんする。
これらは節税ではなく脱税であり、重加算税や刑事罰の対象です。
取引所からの情報や海外送金の記録は税務署に届いており、隠すことはできません。
この記事で紹介した対策は、すべて法律の範囲内で認められたものです。
正しい方法で、正しく減らす。
これが唯一の道です。
まとめ
仮想通貨の節税は、12月31日で締め切られます。
年内にできるのは、含み損の活用、20万円ルールの調整、経費の整理、所得控除の活用の4つです。
そして2026年末は、申告分離課税への移行という新しい論点と、その前に増え続けている税務調査という現実があります。
まだ調査の連絡が来ていない方は、いまが最も条件の良い時期です。
年内の対策を打ち、自分の所得を正確に計算しておく。
それだけで、税負担も、抱えている不安も軽くなります。
当事務所では、損益計算の代行から年内の対策のご相談、確定申告、税務調査への対応まで一括でお受けしています。
12月に入ると相談が集中するため、早めのご連絡をおすすめします。
初回のご相談は無料です。
今年の利益がいくらになりそうか、まだ計算できていない方こそ、お早めにご相談ください。
▼ 仮想通貨の節税・損益計算の無料相談はこちらから
用語集
含み損
保有している資産の価格が下がり、売れば損失が出る状態のことです。
売却して初めて、税金の計算に反映されます。
損益通算
利益と損失を相殺することです。
仮想通貨の損失は、同じ年の雑所得の中でしか相殺できません。
20万円ルール
給与所得者で給与以外の所得が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告が不要になる規定です。
住民税の申告は別途必要です。
所得控除
課税される所得を計算する前に差し引ける控除です。
ふるさと納税やiDeCoの掛金が代表例で、税率が高い年ほど効果が大きくなります。
申告分離課税
他の所得と分けて、一律の税率で税金を計算する方式です。
上場株式などが対象で、暗号資産にも導入が決まりました。
特定暗号資産
申告分離課税の対象となる暗号資産です。
金融商品取引業者登録簿に登録された銘柄などに限られます。
無申告加算税
期限内に申告しなかった場合に上乗せされる税金です。
調査の連絡前に自分から申告すれば原則5%、調査後は15%から30%になります。
出典
所得税法第69条(損益通算)
所得税法第121条(確定所得申告を要しない場合)
国税通則法第66条(無申告加算税)
租税特別措置法第38条の2(特定暗号資産の譲渡による所得に係る申告分離課税)
租税特別措置法第38条の3(特定暗号資産に係る譲渡損失の繰越控除)
金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)
財務省 「令和8年度税制改正の解説」
国税庁 「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」
大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士
執筆者は税理士 大見光男(税理士登録番号 156268、東京税理士会玉川支部所属)。
相続・暗号資産・法人税務を専門分野とし、13年以上のキャリアを有しています。これまで著書・セミナー・取材などを通じて専門知識を発信してきました。
本記事は、制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。細部の要件や例外については割愛しております。申告分離課税の適用開始時期および特定暗号資産の範囲は、今後の政令等により確定します。個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、詳細はお問い合わせください(2026年9月現在の法令に基づく解説です)。

