暗号資産で稼いだら法人化すべきか?税率差の真実と含み益課税の落とし穴を税理士が解説|コラム

2026.08.31

仮想通貨

暗号資産で稼いだら法人化すべきか?税率差の真実と含み益課税の落とし穴を税理士が解説

執筆:大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士。

暗号資産で大きな利益が出た。
税金を計算してみたら、半分近くが消えることがわかった。
調べてみると「法人化すれば税率が下がる」という情報が出てくる。
本当なのか、自分もやるべきなのか。
このページにたどり着いた方は、いま、その分かれ道に立っているはずです。

結論から言えば、法人化で税負担が大きく下がる人は確かにいます。
しかし、暗号資産の法人化には、他の事業の法人化にはない特有の落とし穴が2つあり、知らずに進めると逆に大損します。
この記事では、税率差の本当のところと、落とし穴、そして判断の基準を、東京都世田谷区の大見税理士事務所が解説します。
当事務所は暗号資産の法人税務顧問を専門分野のひとつとしています。

個人と法人で、税率はどれだけ違うのか

まず、法人化が検討される理由である税率差を正確に見ておきます。

個人が暗号資産で得た利益は雑所得として給与などと合算され、所得が増えるほど税率が上がります。
所得税は5%から45%の7段階で、住民税10%を加えると、最高で約55%に達します(『所得税法89条』)。
年間の所得が4,000万円を超える部分は、半分以上が税金になる計算です。

一方、会社の利益にかかる法人税は、資本金1億円以下の会社なら、利益800万円までの部分が15%、それを超える部分が23.2%です(『法人税法66条』『租税特別措置法42条の3の2』)。
地方税を含めた実際の負担率は、利益の規模によっておおむね23%から34%程度です。

つまり、利益が大きくなるほど、個人の55%と法人の34%の差が開いていきます。
利益が数千万円規模になれば、その差は年間で数百万円から一千万円を超えることもあります。
これが、法人化が語られる理由です。

税率以外の法人化のメリット

税率差の他にも、法人には個人にない仕組みがあります。

1つ目は、損失を10年間繰り越せることです(『法人税法57条』)。
個人の暗号資産の損失は翌年に持ち越せず、その年で消えてしまいます。
法人なら、大きな損失を出した年の赤字を、翌年以降の利益と相殺できます。
値動きの激しい暗号資産では、この違いが非常に大きく効きます。

2つ目は、損益通算の範囲が広いことです。
個人では暗号資産の損失を他の所得と相殺できませんが、法人の利益は一本なので、暗号資産の損失を他の事業の利益と相殺できます。

3つ目は、経費や報酬の設計です。
役員報酬として給与を受け取れば給与所得控除が使え、退職金の仕組みや生命保険の活用など、個人にはない選択肢が生まれます。

落とし穴1:法人は「売っていない利益」にも課税される

ここからが、この記事で最もお伝えしたいことです。

個人の場合、暗号資産を売らずに持ち続けている限り、いくら値上がりしても税金はかかりません。
しかし法人は違います。
法人が保有する暗号資産は、決算のたびに時価で評価し、値上がり分の含み益に課税されます(『法人税法61条』)。

例えば、法人で買ったビットコインが決算日に大きく値上がりしていたら、売っていなくても、その値上がり分が利益として法人税の対象になります。
翌期に暴落しても、前期に払った税金は戻ってきません。
長期保有を前提に法人化した方が、この含み益課税で納税資金に困るケースは珍しくありません。

令和6年度の税制改正で、譲渡制限をかけて公表手続きをした暗号資産なら原価法を選べる制度ができましたが、要件が厳格で、通常の取引所での保有には基本的に使えません。
長期保有目的の暗号資産を法人に持たせることには、今も慎重な検討が必要です。

落とし穴2:個人の暗号資産を法人に移した瞬間に課税される

2つ目の落とし穴は、法人化の入口にあります。

すでに個人で持っている暗号資産を、新しく作った法人に移そうとすると、その移転は税務上「時価で売却した」扱いになります。
会社に売る形でも、出資として渡す形でも、無償で渡す形でも、結果は同じです。
つまり、移した時点で、それまでの含み益が個人の雑所得として課税されます。

ここで多くの方が誤解しています。
含み益が大きい暗号資産を法人に移せば税率が下がる、と考えて法人化すると、移転の瞬間に個人の最高55%の税率で課税され、法人化の効果が出る前に大きな納税が発生します。
法人化の効果があるのは、法人化した後に法人で得る利益に対してだけです。

この仕組みから導かれる結論は明快です。
暗号資産の法人化は、含み益が小さい時期、あるいはこれから新しい資金で取引を始める時期に行うのが有利で、含み益が膨らんだ後に慌てて行うのは最も不利になります。
法人化は「いつやるか」がすべてと言っても過言ではありません。

落とし穴3:維持にかかるコスト

3つ目は、他の法人化と共通の話ですが、忘れてはいけません。

法人は、赤字の年でも法人住民税の均等割が年7万円かかります。
社会保険への加入も義務になり、役員報酬を出せばその保険料が発生します。
決算と申告の手間が増えるため、税理士への費用も個人より高くなるのが一般的です。
当事務所では格安の税務顧問サービスを提供しており、この維持コストを抑えることで、法人化のメリットが出るラインを引き下げることができます。

悩みを打ち合わせで解決

法人化を検討すべき人の3つの条件

以上を踏まえて、法人化を真剣に検討する価値がある方の条件を整理します。

1つ目は、利益の規模です。
一般に、年間の利益が800万円から900万円を超えるあたりから、法人の税率が有利になり始めます。
維持コストを差し引いても手取りが増えるかどうかが基準です。

2つ目は、継続性です。
今年だけの一時的な利益ではなく、来年以降も取引を続けて利益を出す見込みがあるかどうか。
一度きりの利益なら、法人化の効果はほとんどありません。

3つ目は、含み益の状態です。
いま個人で持っている暗号資産の含み益が小さいか、これから新規の資金で法人での取引を始められるか。
含み益が大きい資産を法人に移す前提なら、移転時の課税額を必ず先に試算する必要があります。

3つとも当てはまる方は、法人化で年間数百万円の差が出る可能性があります。
1つでも外れる方は、まだ個人のままが有利なことが多いです。

オンラインカジノの利益を法人化したい方へ

最近、オンラインカジノで得た利益について法人化を検討するご相談が増えています。
率直にお伝えすると、カジノの賭け金の勝ち負けそのものを法人の事業として扱うことは、税務上も法律上も多くの問題を抱えており、おすすめできません。

一方で、すでに得た資金を元手に、法人で暗号資産の投資やその他の事業を行うという整理であれば、検討の余地はあります。
ただし、過去の利益の申告が済んでいることが前提です。
無申告の状態で法人化しても、過去の税金は消えません。
この点は仮想通貨の無申告の危険性を解説した記事で詳しく説明しています。

まとめ

暗号資産で大きく稼いだ場合、法人化によって税率を最大55%から30%前後まで下げられる可能性があります。
しかし法人には、売っていない含み益に課税される仕組みと、個人の資産を移す時点で課税される仕組みという、暗号資産特有の落とし穴があります。
法人化の成否は、利益の規模よりも「いつ、どの資産で始めるか」で決まります。

当事務所では、法人化した場合としない場合の税負担を、あなたの数字で比較する無料相談を行っています。
試算の結果、まだ個人のままが有利であれば、正直にそうお伝えします。
暗号資産に対応した法人顧問のサービス内容は、暗号資産の法人税務顧問のご案内ページをご覧ください。
一般的な法人化の損益分岐点については、フリーランスの法人化の目安を解説した記事も参考になります。

▼ 法人化の無料試算・ご相談はこちらから

用語集

含み益
保有している資産が値上がりして、売れば利益が出る状態のことです。
個人は売るまで課税されませんが、法人は決算のたびに課税されます。

期末時価評価
法人が決算日に保有している暗号資産を、その日の時価で評価し直すことです。
値上がり分は利益、値下がり分は損失として扱われます。

時価譲渡
資産を移すとき、その時点の市場価格で売却したものとみなす税務上の扱いです。
個人から法人へ暗号資産を移す場合に適用されます。

欠損金の繰越し
法人が出した赤字を、翌年以降の黒字と相殺できる仕組みです。
最長10年間繰り越せます。

均等割
法人が赤字でも毎年かかる地方税です。
小さな会社の場合、年間7万円が最低額の目安です。

出典

所得税法第89条(税率)
法人税法第66条(各事業年度の所得に対する法人税の税率)
租税特別措置法第42条の3の2(中小企業者等の法人税率の特例)
法人税法第61条(暗号資産の期末時価評価)
法人税法第57条(欠損金の繰越し)
財務省 「令和6年度税制改正の解説」(法人税法の改正・暗号資産の期末時価評価)
国税庁 「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」
総務省 地方税制度「法人住民税」(均等割)


大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士

執筆者は税理士 大見光男(税理士登録番号 156268、東京税理士会玉川支部所属)。
相続・暗号資産・法人税務を専門分野とし、13年以上のキャリアを有しています。これまで著書・セミナー・取材などを通じて専門知識を発信してきました。

本記事は、制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。細部の要件や例外については割愛しております。個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、詳細はお問い合わせください(2026年8月現在の法令に基づく解説です)。

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