フリーランスの法人化の目安は下がっている?税理士費用から考える損益分岐点|コラム

2026.08.14

税務顧問

フリーランスの法人化の目安は下がっている?税理士費用から考える損益分岐点

 

執筆:大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士。

去年と同じように働いただけなのに、税金と保険料の通知を見て言葉を失った。
そんな経験はないでしょうか。

物価の上昇にあわせて仕事の単価が上がり、売上が1,000万円から1,500万円になった。
喜ばしいはずなのに、手元に残るお金は思ったほど増えていない。むしろ、負担ばかりが重くなった気がする。
実はいま、フリーランスや一人親方、個人事業主の方の多くが、同じ壁にぶつかっています。

その壁を越える選択肢のひとつが、会社をつくること、いわゆる法人化です。
ただ、ネットで調べると「法人化は利益800万円からが目安」という情報ばかりが出てきます。自分はまだ早いのか、と諦めた方も多いはずです。

この記事では、その常識が今どう変わりつつあるのかを、東京都世田谷区深沢(等々力7丁目バス停付近・自由が丘エリア)の大見税理士事務所が、初めての方にもわかるように解説します。

なぜ「利益800万円が目安」と言われてきたのか

まず、この目安の根拠から説明します。

個人事業主の税金は、利益が増えるほど税率が段階的に上がっていく仕組みです(『所得税法89条』)。
利益が少ないうちは低い税率で済みますが、増えるにつれて負担の割合がどんどん重くなります。

一方、会社の利益にかかる税金は、利益800万円までの部分が15パーセント、それを超える部分でも23.2パーセントと、ほぼ一定です(『租税特別措置法42条の3の2』『法人税法66条』)。
利益がある水準を超えると、個人で払う税金より会社で払う税金のほうが安くなる。その分かれ目がおおよそ利益800万円から900万円、というのが従来の説明でした。

この説明自体は、間違いではありません。
ただし、ここには語られていない前提があります。

その目安には「高い税理士費用」が織り込まれている

会社をつくると、決算や申告の手続きが個人より格段に複雑になります。自力での対応は難しく、税理士に依頼するのが一般的です。
そしてその費用は、従来の相場では年間40万円から60万円ほどかかりました。

つまり「利益800万円が目安」という常識は、法人化すると毎年数十万円の税理士費用が上乗せされる、という前提で計算されたものなのです。
税金が安くなっても、税理士費用で相殺されてしまうなら意味がない。だから目安のラインが高く設定されていた、というわけです。

ここで、考えてみてください。
もし税理士費用が年間20万円で済むなら、どうなるでしょうか。浮いた数十万円の分だけ、法人化のメリットが出るラインは下がります。
つまり、利益800万円に届いていない方でも、法人化を検討する価値が生まれるのです。

フリーランスの法人化の損益分岐点イメージ

税金だけではない、保険料という重い負担

もうひとつ、見逃されがちな要素があります。健康保険と年金の負担です。

個人事業主が加入する国民健康保険は、所得が増えるほど保険料が上がり、2026年度の年間上限は113万円に達しています(『国民健康保険法施行令29条の7』等)。この5年間だけで14万円も引き上げられました。
さらに国民年金は、どれだけ払っても将来受け取る年金額は基礎部分のみです。

会社をつくって厚生年金と健康保険に切り替えると、保険料の負担の仕組みが変わり、将来受け取る年金も手厚くなります。
所得の水準によっては、税金の差よりも保険料の差のほうが大きく効いてくるケースさえあります。法人化の判断は、税金だけを見ていては正しく行えないのです。

もちろん、法人化には注意点もあります

公平のために、負担が増える面もお伝えします。

会社は、たとえ赤字の年でも、法人住民税の均等割という税金が毎年かかります。資本金1,000万円以下の小さな会社であれば、年間7万円です(『地方税法52条』『地方税法312条』)。
また、会社の設立には登記の費用がかかり、社会保険への加入も義務になります(『厚生年金保険法9条』『健康保険法3条』)。決算や申告の手間が増えることは、先ほど述べたとおりです。

つまり法人化は、増える負担と減る負担を天秤にかけて判断するものです。
そしてその天秤の重りのひとつだった税理士費用が軽くなった今、天秤の傾きは以前と変わってきています。

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ここまで読んで、自分の場合はどうなのだろう、と思われたのではないでしょうか。
正直にお伝えすると、法人化の損益分岐点は、売上、経費、家族構成、事業の将来性によって一人ひとり異なります。記事の一般論だけで結論を出すのは危険です。

だからこそ、当事務所では初回のご相談を無料でお受けしています。あなたの数字をもとに、法人化した場合としない場合の負担を具体的に比べ、どちらが有利かを一緒に確認します。試算した結果、まだ個人事業のままが有利であれば、正直にそうお伝えします。
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用語集

法人化(法人成り) 個人事業主が会社をつくり、事業を会社に引き継ぐことです。税金や保険料の仕組みが個人のときと大きく変わります。 累進課税 利益が増えるほど、段階的に高い税率が適用される仕組みです。個人事業主の所得税がこの方式です(『所得税法89条』)。 国民健康保険 個人事業主やフリーランスの方が加入する公的な医療保険です。所得に応じて保険料が決まり、2026年度の年間上限は113万円です(『国民健康保険法施行令29条の7』等)。 厚生年金 会社に勤める人や会社の役員が加入する年金制度です。国民年金に上乗せされる形で、将来受け取る年金が手厚くなります(『厚生年金保険法9条』)。 均等割 会社が赤字でも毎年かかる地方税です。小さな会社の場合、年間7万円が最低額の目安です(『地方税法52条』『地方税法312条』)。

大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士

執筆者は税理士 大見光男(税理士登録番号 156268、東京税理士会玉川支部所属)。
相続・暗号資産・法人税務を専門分野とし、13年以上のキャリアを有しています。これまで著書・セミナー・取材などを通じて専門知識を発信してきました。

本記事は、制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。細部の要件や例外については割愛しております。個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、詳細はお問い合わせください(2026年8月現在の法令に基づく解説です)。

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