みなさんドクターX~外科医・大門未知子~は見ていますか?テレビ朝日系の木曜ドラマ21:00から放送されているテレビドラマです。特定の病院に属さずにフリーランスの女性外科医を米倉涼子が演じていて高難度の手術を「私失敗しないので」と医療ミスはおこさない決め台詞と、病院内の派閥争いや下働きを「いたしません」で拒否する一匹狼的な役柄で患者を救っていくというドラマになっています。シーズン5もあるのですが面白くて毎週楽しみにしています。
大門未知子は特定の病院に属していないのでよく他の医師から「このバイトが」などといわれますが「フリーランスです」と反論しています。大門未知子はフリーランスなのかどうかを今回検証してみたいと思います。
従業員を外注にするメリット
納税を少なくさせる手段の一つとして従業員を外注化することがあります。従業員を外注(従業員を独立させて個人事業主=フリーランスとして報酬を支払うスキーム)にすると
- 支払消費税の対象となるので消費税の納税を低くできる
- リスク回避ができる(事故があった場合はフリーランスの責任となる)
- 残業代が不要
- 社会保険料の負担が不要
などのメリットがあります。
従業員からしてもオススメはできませんが源泉徴収や社会保険料の負担がなくなるため手取りが増えます。
そのため実態としては従業員なのに口裏をあわせて外注として契約をおこない不当に税金を低くするスキームが昔にありました。今は実態をみていくつかのポイントをクリアしないと認められません。税務の世界は形だけではダメで実態がどうなっているかで判断をします。外注として請負契約を結んでも実態が伴っていなければ従業員として判断をされてしまいます。
外注の判定のポイント
- 時間的、空間的拘束を受けるか? (フリーは請負契約なので時間単位ではない)
- フリーランスがその作業を第3者に任せることができるか?(再下請けできるか?)
- 1つ1つの作業について指揮監督命令をうけるか?
- 結果が失敗に終わっても報酬を請求できるか?(従業員は結果がでなくても給料はでるがフリーは成果がないと報酬はもらえない)
- 材料や道具が支給されているか?(フリーランスは自分で用意する)
・・・・などです。
これがクリアされないと外注として契約書を結ぼうが実態は従業員と認定されてしまいます。
怖すぎるペナルティ
従業員として認定されてしまうと1.消費税の追加納税2.源泉税の追加納付3.各種のペナルティとして延滞税や加算税などが発生して大きなダメージとなります。税務署は関係ありませんが社会保険料にも関係してきます。
- さて大門未知子はどうでしょう?
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まずどんなに重要な会議があっても17:00時になれば帰ってしまいます。8:00~17:00の勤務時間だったとおもいますので1.の時間的拘束を受けています。残業代の請求もしています。
2.の大門未知子が行う仕事を第3者に任せることができるか?は専門性が高いため判断が難しいですね、契約上は第3者に任せることができても技術力の差でできなかったりするのでグレーです。
3.指揮監督命令を受けているかは助手で手術メンバーとして入っても主治医の力が及ばないと判断すれば押しのけて自分が執刀しているので指揮監督命令は受けていないですが少し苦しいかもしれません。
4.手術が失敗になれば報酬は支払わないと院長は言っているためクリアですね(別の論点、口止め料などで結局報酬は発生していますが)
5.手術道具や材料は病院が用意しているためアウトです。
結局はフリーランスとはいえない
時間的拘束を受け、残業代も請求し、道具も病院が用意して、また履歴書を病院に提出しています。以上のことから私が病院の顧問税理士であれば雇用契約を結び源泉徴収するようにアドバイス致します。フリーランスとは請負契約なので、手術にたいしてだけ報酬が発生します。「医師免許がなくてもできる仕事は一切致しません」なので手術だけ実行していればフリーランスですがそこは舞台が病院なのでうまいことはいきませんね。ただし大門未知子が望んでいる仕事のスタンスはフリーランスです。大門未知子に似たブラックジャックはフリーランスといえるかもしれませんね。道具は自分で用意していますし時間の拘束はうけていません。
もしかしたら派遣??
まだ作中で言及されていませんが大門未知子の師匠である神原晶は神原名医紹介所を運営しているため派遣の可能性もあります(大門未知子は給料制、内田有紀演じる城之内は歩合制と言及していたため)派遣であれば神原名医紹介所の従業員なのでそもそもフリーランスとはいえないような気もします。
面白いドラマに対して無粋な感じもしますが税理士としては少し違和感があったため採り上げてみました。ドラマは1話完結で最後は必ず大門未知子が勝つというわかりやすいストーリーで見ていて安心します。そういえばマルサの女など税務署や国税局が主人公のドラマはいくつかありますが税理士が主人公って見たことないですね。弁護士や行政書士はあるのに悔しいです。