暗号資産の税務調査をひとりで受けてはいけない理由|実際の失敗例と税理士に依頼すべき場面|コラム
コラム
2026.09.13
仮想通貨
暗号資産の税務調査をひとりで受けてはいけない理由|実際の失敗例と税理士に依頼すべき場面
執筆:大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士。
暗号資産の税務調査は、ある日突然の電話から始まります。
調査官はすでに取引所や銀行の情報を持ったうえで連絡してきます。
ひとりで対応すると、不利な発言が記録に残り、履歴を出せなければ推計で課税されます。
まだ連絡が来ていない方は自分から申告することで負担を大きく減らせます。
以下で、実際にある失敗例と対処法を解説します。
暗号資産の税務調査に関するご相談が、当事務所に急増しています。
この記事は、すでに税務署から連絡が来てしまった方と、まだ来ていないけれど不安を抱えている方の両方に向けて書いています。
自分は利益も出ていないし調査の対象にならないだろう、と思い込んだまま対応して取り返しがつかなくなる方を減らしたいと思っています。
東京都世田谷区の大見税理士事務所が解説します。
税務調査は、ある日の電話一本から始まる
税務調査は、税務署からの電話または書面での連絡で始まります。
これを事前通知といい、法律で定められた手続きです(『国税通則法74条の9』)。
ここで理解しておくべきことがあります。
税務署は、何も知らない状態で電話をかけてくるわけではありません。
国内の取引所からの情報提供、銀行口座の入出金記録、海外への送金記録。
こうした情報をあらかじめ照会し、大口の不審な資金の動きがある人を特定したうえで連絡してきます。
つまり、調査官はすでに答えに近いものを持っています。
「わからないから聞く」のではなく、「知っているうえで確認する」のが暗号資産の調査です。
この前提を知らずに対応することが、後で述べる失敗の入口になります。
いままでにあった4つの失敗パターン
当事務所へのご相談や、暗号資産の税務に関わる中で見てきた典型的な失敗を4つ紹介します。
どれも特別なケースではなく、繰り返し起きているパターンです。
1. 交換の申告漏れで、納税資金が残らなかった
ビットコインでイーサリアムを買う。
この取引が利益の確定にあたることを知らず、日本円に出金したときだけ申告していた方の事例です。
税務署の指摘で、交換のたびに利益が出ていたことが判明しました。
ところが、指摘を受けた時点では相場が暴落した後でした。
過去の高値の時点で確定した利益に対して課税されるため、手元の資産を売っても納税額に届きません。
ペナルティを含めた納税を済ませた結果、手元にほとんど資金が残らない状態になりました。
暗号資産の税金で最も恐ろしいのは、この時間差です。
税金は利益が出た年の相場で計算され、納税は後からやってきます。
私が暗号資産の税理士として活動を始めた2017年、ビットコインは10万円から240万円まで急上昇しました。
しかしその1か月後、2018年1月のコインチェックの盗難事件で相場は暴落します。
当事務所には、このとき多くのご相談が寄せられました。
2017年のうちにコイン同士の交換を何度も行い、日本円として手元に残していなかったため、納税資金が用意できないというご相談です。
その後も、中国のマイニング禁止、Terraショック、FTXの破綻と、暴落は繰り返し起きています。
利益を確定させた年と、納税する年の相場が違う。
この構造は、これからも変わりません。
2. マイニング報酬に、知らないうちに1,000万円近い利益が発生していた
アルトコインが高騰していた時期にマイニングを行っていた方の事例です。
マイニングやステーキングで受け取った暗号資産は、受け取った時点の時価が収入になります(国税庁FAQ、『所得税法36条』)。
売っていなくても、受け取った瞬間に課税される仕組みです。
この方は売却していなかったため利益の自覚がなく、結果的に1,000万円近い所得があったとみなされ、想定をはるかに超える納税を求められました。
3. 海外取引所の履歴が取れず、約3,000万円の利益と推計された
これは、税理士が入る意味が最もはっきり出た事例です。
メインで使っていた海外取引所の取引履歴が取得できなくなっていた方がいました。
税務署は、履歴がなく正確な計算ができない場合、財産や収支の状況から所得を推計して課税することができます(『所得税法156条』)。
このケースでは、当初、約3,000万円の利益があったとする推計が示されました。
そこから、銀行口座の入出金、取引所間の送金記録、各取引所の残高の差額などを積み上げ、実際の利益を合理的に再構成しました。
最終的に、認められた所得は約1,000万円まで減額されました。
推計課税は、こちらが何も示せなければそのまま通ってしまいます。
逆に、資料にもとづく合理的な計算を提示できれば、覆せる余地があるのです。
この作業をひとりで行うのは、現実的にきわめて困難です。
4. 連絡が来る前に気づいて、重い負担を回避できた
最後は、うまくいった事例です。
年間50万円ほどの利益が出ていた兼業のトレーダーの方が、ネットの記事を見て申告が必要だったと気づきました。
税務署から連絡が来る前に税理士に相談し、自主的に過去の申告を見直しました。
その結果、重いペナルティを受けずに済んでいます。
調査の通知前に自分から期限後申告をすれば、無申告加算税は原則5%です(『国税通則法66条』)。
調査を受けてからでは15%から30%になります。
気づいたタイミングだけで、これだけ変わります。
▼ 調査の連絡が来た方も、まだの方も、初回のご相談は無料です
ひとりで調査を受けることの3つのリスク
税務調査に税理士をつけるかどうかは、納税者が自由に決められます。
ひとりで受けることも法律上は問題ありません。
そのうえで、暗号資産の調査に限っては、ひとりでの対応をおすすめできない理由が3つあります。
1つ目は、発言が記録として残ることです。
調査では質問応答記録書という書面が作成され、署名を求められることがあります。
ここでの何気ない一言が、後の加算税の判断を左右することがあります。
特に、意図的に隠したと受け取られる発言は、重加算税の根拠にされかねません。
悪意がなくても、説明の仕方ひとつで結論が変わってしまうのです。
2つ目は、計算の主導権を握られることです。
暗号資産の損益計算は、取引所をまたぐ移動、コイン同士の交換、報酬の受け取りが絡み、非常に複雑です。
こちらが正確な計算を示せなければ、税務署側の計算がそのまま通ります。
先ほどの推計課税の事例が、まさにこれにあたります。
3つ目は、時間と精神の消耗です。
5年分の履歴の提出、計算のやり直し、複数回にわたる調査官とのやり取り。
仕事や生活を続けながらこれに対応するのは、想像以上の負担です。
その間も延滞税は増え続けます。
税理士をつけると、具体的に何が変わるのか
精神的に心強い、という話ではなく、制度上できることが変わります。
税理士は、税務代理権限証書という書面を税務署に提出することで、納税者に代わって調査官に主張や説明を行うことができます(『税理士法2条、30条』)。
これは「同席して見守る」のとは違います。
あなたの代わりに、税務のプロが税務署と交渉できるということです。
実際の調査当日も、最初の30分ほど顔を出してご挨拶いただければ、あとはその場を離れていただいて構いません。
本業を止めずに済むという点も、依頼する実際的な意味のひとつです。
具体的には、次のようなことが可能になります。
調査の事前通知を税理士が受け、日程の調整を代わりに行う。
調査当日、専門用語での応答や、事実関係の説明を税理士が担う。
税務署の計算に対して、法律と資料にもとづいた反論を組み立てる。
加算税の種類(重加算税か無申告加算税か)について、要件にもとづいて主張する。
納税資金が足りない場合の分割納付を、あらかじめ相談しておく。
特に暗号資産の場合、調査官も専門性の高い分野であるため、こちらが正確な計算と根拠を示せるかどうかで結論が大きく変わります。
当事務所が実際に立ち会った調査の実態は、仮想通貨の税務調査は5年分まとめて来ることを解説した記事に詳しく書いています。
まだ調査の連絡が来ていない方へ
この記事を読んで不安になった方のうち、まだ税務署から何の連絡も来ていない方。
あなたが一番良い位置にいます。
やるべきことは2つです。
1つ目は、自分の所得を正確に計算することです。
当事務所のご相談で驚くほど多いのが、自分がいくら儲かっているのか把握できていないというケースです。
特に、暗号資産同士の交換で利益が出ていることを理解されていない方が多く、800万円ほどの利益だと思っていたのに、計算してみると3,000万円を超える利益が出ていたという方も少なくありません。
自己流の計算は、どうしても甘い見積もりになりがちです。
想定外の納税額になってから気づくことのないよう、正確な計算をしておく必要があります。
もちろん、計算した結果、思ったより利益が出ていなかったと判明することもあります。
そうであれば、それが一番の安心材料になります。
2つ目は、申告すべき利益があるとわかった場合に、連絡が来る前に自分から申告することです。
無申告加算税が原則5%で済み、延滞税もその時点で止まります。
何年分たまっていても、まとめて申告できます。
無申告を放置する危険性は仮想通貨の無申告はなぜ危険かを解説した記事で詳しく説明しています。

すでに税務調査の連絡が来てしまった方へ
もう電話が来た、書面が届いた。
その場合でも、できることは残っています。
調査の当日までに、税理士に依頼することは可能です。
税務代理権限証書を提出すれば、そこから先は税理士が窓口になります。
調査が始まった後でも、途中から依頼することもできます。
大切なのは、その前に自己流で対応しないことです。
不利な発言が記録に残ってしまってからでは、取り戻すのに余計な労力がかかります。
資料を求められている、何をどこまで出せばよいかわからない。
その段階でご相談ください。
最近は、いきなり5年分の調査を通知されるケースが激増しています。
この場合、多くは既に仮装・隠ぺいを疑われている状態だと考えたほうがよいでしょう。
私が立ち会ったケースでも、こんなことがありました。
調査官から「20歳を超えた成人が数千万円の利益を得て、確定申告をしなければいけないことを知らなかったは通用しません」と、隠ぺいを決めつけるような発言があったのです。
しかし事実は違いました。
交換によって利益は出ていたものの、その後に時価が下がっていたため、ご本人は上がったり下がったりして結局は損をしている、と誤認していただけでした。
隠そうとした事実はどこにもありません。
そのことを資料と経緯にもとづいて説明し、交渉した結果、重加算税は回避できました。
知らなかったことと、隠したことは違います。
しかし、その違いをその場で説明しきるのは、専門家でなければ簡単ではありません。
当事務所は、暗号資産の税務調査への対応を専門分野としています。
損益の再計算から、調査当日の対応、加算税の主張、納付の相談まで一貫してお受けします。
対応の流れは仮想通貨の税務調査のご案内ページをご覧ください。
まとめ
暗号資産の税務調査は、電話一本から始まります。
交換の申告漏れ、マイニング報酬の見落とし、履歴喪失による推計課税。
いずれも、知らなかったでは済まされない結果になります。
ひとりで受けることは可能ですが、発言が記録に残り、計算の主導権を握られ、消耗します。
税理士をつければ、あなたに代わって税務署と話し、資料にもとづいて反論を組み立てることができます。
約3,000万円の推計が約1,000万円まで減額された事例や、隠ぺいの決めつけに対して重加算税を回避した事例のように、結果が変わる余地は確かにあるのです。
そして、まだ連絡が来ていないのであれば、いまが最も有利な時期です。
初回のご相談は無料です。
何年分たまっていても、まずは現状をお聞かせください。
▼ 税務調査の立会い・期限後申告のご相談はこちらから
用語集
事前通知
税務署が実地調査を始める前に、調査の日時や対象を知らせる手続きです。
税理士に依頼していれば、税理士が代わりに受けることもできます。
質問応答記録書
調査で調査官が納税者との問答を記録し、署名を求める書面です。
内容が加算税の判断に影響するため、対応には注意が必要です。
推計課税
帳簿や履歴がなく正確な所得を計算できない場合に、税務署が財産や収支の状況から所得を推計して課税することです。
仮装・隠ぺい
所得を隠したり、事実を偽ったりすることです。
これがあったと認定されると、最も重い重加算税の対象になります。
税務代理権限証書
税理士が納税者に代わって税務署とやり取りする権限を証明する書面です。
これを提出することで、税理士が代わりに主張や説明を行えます。
期限後申告
申告期限を過ぎてから行う申告です。
調査の通知前に自主的に行えば、無申告加算税が原則5%に軽減されます。
出典
国税通則法第66条(無申告加算税)
国税通則法第68条(重加算税)
国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)
所得税法第36条(収入金額)
所得税法第156条(推計による更正又は決定)
税理士法第2条(税理士の業務)・第30条(税務代理の権限の明示)
国税庁 「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」
国税庁 「令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」
大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士
執筆者は税理士 大見光男(税理士登録番号 156268、東京税理士会玉川支部所属)。
相続・暗号資産・法人税務を専門分野とし、13年以上のキャリアを有しています。これまで著書・セミナー・取材などを通じて専門知識を発信してきました。
本記事は、制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。記載した事例は個人が特定されないよう内容を一般化しています。個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、詳細はお問い合わせください(2026年9月現在の法令に基づく解説です)。

