【相続税の最強の節税】小規模宅地等の特例の活用方法を解説|コラム

2025.09.29

相続

【相続税の最強の節税】小規模宅地等の特例について解説

大見税理士事務所(東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士)が、相続税における「小規模宅地等の特例」について、制度の趣旨から具体例、実務上の注意点まで詳しく解説します。本記事は制度の概要説明であり、個別具体的なご相続の相談はお問い合わせください。

小規模宅地等の特例とは

相続税法69条の4に定められた制度で、被相続人が生前に事業用または居住用として使用していた宅地等を親族が相続し、一定の要件を満たす場合に、その宅地の評価額を大幅に減額して課税価格を計算できる特例です。評価額1億円の宅地であっても、5,000万円や8,000万円といった減額が可能となるケースがあります。例えば家業の店舗敷地や自宅敷地がこれに当たり得ます。

この特例の背景には「最低限の生活基盤の維持」という考え方があります。もしこの制度がなければ、家業の店舗や自宅の土地に多額の相続税が課され、相続人が土地を売却しなければ納税できないという事態が生じかねません。相続後も同じように居住・事業を続ける親族が土地を維持できるように税負担を軽減する、というのが立法趣旨です(財産評価基本通達23-2)。

非課税制度との違い

非課税制度(相続税法12条等)は課税価格に算入しないのに対し、小規模宅地等の特例は課税価格に算入する金額自体を減額する制度です。墓地の非課税(全額非課税)や生命保険金の非課税限度額(5,000万円のうち3,000万円非課税)と比較するとイメージしやすいでしょう。同じ「税負担の軽減」でも、法的位置づけが異なるため、適用要件や申告書の記載も変わります。

制度の対象宅地等の4区分

対象となる宅地等は大きく四種類です。

一つ目に特定居住用宅地等(居住用)

二つ目に特定事業用宅地等(個人事業用)

三つ目に貸付事業用宅地等(アパート経営や土地賃貸)

四つ目に特定同族会社事業用宅地等(法人事業用)

減額割合は、特定居住用・特定事業用・特定同族会社事業用が80%、貸付事業用は50%です。限度面積は区分により330㎡、400㎡、200㎡などと設定されています(相続税法施行令40条の2)。

小規模宅地等の特例の適用要件(6つのポイント)

小規模宅地等の特例を受けるためには、次のような条件をすべて満たす必要があります。これらは相続税法や施行令、通達で詳細に定められています。

相続開始直前に被相続人が事業用または居住用として使用していたこと(用途要件)

例として、相続開始前に名義だけ店舗を建てて営業許可を取ったが、実際には営業していない土地は原則対象外。ただし減価償却資産が課税価格の15%以上など一定規模以上であれば例外的に認められることがあります。

宅地が建物・構築物の敷地として供されていること

更地や資材置き場のままでは対象外です。借地の場合は借り手が建物を建てていることが必要です。実態のある使用が前提となります(財産評価基本通達23-2)。

取得者が被相続人の親族であること(取得者要件)

また、事業を引き継ぐ親族と宅地を相続する親族が同一であることが原則です。別の親族が事業を引き継ぐ場合は適用できません。

申告期限まで継続所有していること

相続税の申告期限(原則10か月)までの間に所有権が移っている場合や分割が未確定な場合は適用不可となる可能性があります。

売却せず生活基盤として使い続けること

相続後すぐに売却したり、他の用途に転用すると特例が取り消されるリスクがあります。

従前どおり事業用・居住用として継続利用していること

事業内容や用途の実態が問われます。名目的に使用しているだけでは認められません。

これらを満たすことで、4つの区分のいずれかに分類され、大幅な減額を受けられます。

対象外となる宅地等の例

一つ目に、空き地です。相続開始直前に事業用・居住用で使用していない土地をいいます。

二つ目に別荘地です。生活基盤ではなく、保養・娯楽目的の土地のことです。

三つ目に贈与で取得した宅地等です。相続税法上の特例のため、生前贈与で取得した土地は対象外です。

四つ目に申告期限時点で分割が未確定の宅地等です。誰が取得するか決まっていない状態では適用不可になります。

これらは典型的な非該当例ですが、実務上は「相続直前に被相続人がどのように使っていたか」「取得者がどう使うか」を総合的に見て判断されます。国税庁の質疑応答事例や裁決事例も確認すると安心です。

特定事業用宅地等のポイントと具体例

被相続人が所有し、商店・工場・診療所など事業用建物を営んでいた敷地が対象です。限度面積400㎡、評価額の80%減額が認められます(相続税法施行令40条の4)。

例として、被相続人が長年八百屋を営んでいた店舗敷地を長男が相続し、同じ八百屋を続けているケースは適用可です。相続直前に形だけ事業を開始した場合は原則対象外ですが、減価償却資産が課税価格の15%以上など一定規模以上であれば適用可です。

注意点として、不動産貸付業等は除かれます。また、親族Aさんが宅地を取得し親族Bさんが事業を引き継いだ場合は適用できず、事業を引き継ぐ親族自身が宅地も取得する必要があります。相続開始前から実態のある事業を行っていること、相続後も継続していることが求められます。

貸付事業用宅地等のポイントと具体例

被相続人が生前にアパート経営や駐車場など「事業的規模」で貸付事業に供していた宅地が対象です。限度面積200㎡、評価額の50%減額が認められます(施行令40条の5)。

3年以内に新規開始した貸付事業は原則対象外ですが、被相続人が3年を超えて特定貸付事業を行っていた場合には新規宅地も適用されます。ここでのポイントは、貸付事業の場合は「宅地単位」ではなく「事業主単位」で3年基準を判定することです。複数ある宅地のうち一つだけが新規開始から3年以内であっても、被相続人が3年を超えて事業的規模を維持していれば適用が認められます。

例として、被相続人が長年にわたり五棟十室基準を満たすアパート賃貸業を営んでおり、新たにC宅地で貸付を始めたところ相続開始まで3年経たなかった場合、C宅地についても適用が認められる可能性があります。

また、貸付事業用宅地等の場合、相続人が同じ貸付事業を継続していることが条件です。相続後に貸付事業をやめてしまった場合は特例が取り消されるリスクがあるため注意が必要です。

特定同族会社事業用宅地等のポイントと具体例

相続開始直前の用途が同族会社の事業用宅地として使用されていた場合が該当します。法人形式で事業が行われているケース、具体的には法人の事業用建物の敷地などです。限度面積400㎡、評価額の80%減額が認められます(相続税法施行令40条の6)。

取得する親族については、事業主体が法人であるため「事業を引き継ぐ」という概念はなく、取得者は単なる親族で構いません。ただし、申告期限まで所有し、当該法人の事業が継続されていることが必要です。さらに、取得した親族は事業を引き継がない代わりに、申告期限において当該法人の役員であること、すなわち経営に関与していることが要件となります。

同族会社の事業のうち不動産貸付業等、一定のものは除かれます。いわゆる店舗等、オペレーショナルな事業であることが前提です。今回減額の対象となる宅地は「被相続人が所有する宅地」であり、法人所有地ではありません。被相続人が所有する宅地を法人が事業用建物の敷地等として利用している場合が前提となり、その際、特定同族会社が被相続人から「有償で」借り受けていることが条件です。この有償賃貸借であることもセットで覚えておきましょう。

例 被相続人が所有する土地を、自らが経営する同族会社が工場敷地として有償賃貸借していた場合、その土地を後継者が相続したときに特定同族会社事業用宅地等として評価減の適用を受けられます。ただし後継者が会社の役員でなければなりません。

特定居住用宅地等のポイントと具体例

被相続人が死亡直前まで居住していた建物の敷地です。配偶者・同居親族・別居親族の取得で要件が異なります。限度面積は330㎡、評価額の80%減額が認められます(相続税法施行令40条の7)。

配偶者が取得者である場合、申告期限までの所有や居住の継続は求められません。被相続人と配偶者が二人で居住していたところ、被相続人の死亡により配偶者が一人暮らしになる場合、小規模宅地の特例のために申告期限まで無理に住み続けることを求めるのは酷であるためです。配偶者が子どもの元へ転居し、場合によっては自宅不動産を売却することも十分あり得ます。こうした事情に鑑み、配偶者は取得するだけで特定居住用宅地等に該当するとされています。

同居親族の場合は、原則どおり、申告期限までの所有と継続居住が必要です。別居親族は、取得して申告期限まで所有していれば足りますが、その代わり「持ち家がないこと」「優先的に利用する他の法定相続人がいないこと」などの追加条件を満たす必要があります。単身赴任中などで一時的に別居している場合の扱いは実務上注意が必要です。

例として被相続人と同居していた長女がその宅地を相続し、引き続き居住している場合は特例の適用可。別居していた長男が相続する場合、持ち家がない等の条件を満たせば適用可能です。

全体として、取得者に優先順位が付されていると理解すると整理しやすいでしょう。第一に配偶者、次に同居親族、それらがいない場合には別居親族でも認められる、という構造です。

減額金額の計算イメージ

小規模宅地等の特例では、評価減の計算に「限度面積」「減額割合」を用います。実務では、面積や評価額を按分して計算するため、具体的な算式を理解しておくことが重要です。

例 宅地460㎡・時価5,060万円(特定事業用)
限度面積400㎡の比率(400/460)を掛けた評価額に減額割合(80%)を乗じます。
5,060万円 ×(400÷460)×80%=減額金額、
となります。残額が課税価格に算入されます。
(根拠 相続税法施行令40条の2・財産評価基本通達23-2)

この計算を誤ると、減額適用後の課税価格や相続税額が変わってしまうため、税理士や専門家が正確に判定することが不可欠です。

よくある誤解と注意点

形だけの事業開始 相続開始前3年以内に名目的に事業を開始した宅地は原則対象外。ただし減価償却資産の割合など一定規模以上であれば認められる場合があります。

事業継承者と宅地取得者の不一致 宅地を相続した人と事業を引き継いだ人が別の場合は適用不可。事業を引き継ぐ親族自身が宅地も取得する必要があります。

別居親族の要件 「持ち家がない」「優先的に利用する他の法定相続人がいない」など、別居親族には追加条件が課されています。単身赴任中など特殊なケースでは要件を慎重に確認する必要があります。

同族会社事業用宅地の有償貸借 被相続人所有地を法人が無償で使用している場合は対象外。必ず有償で借り受けていることが必要です。

貸付事業用宅地の3年ルール 宅地単位ではなく事業主単位で判定するため、複数の宅地を持つ場合は事業全体での継続性を確認する必要があります。

用語の意義

小規模宅地等の特例 相続税法69条の4に定める制度で、被相続人が生前に事業や居住の用に供していた宅地等を一定の親族が相続した場合に、その宅地の評価額を大幅に減額して課税価格を計算できる特例。最低限の生活基盤の維持を目的としており、非課税制度とは異なり「課税価格に算入する金額自体を減額」する点が特徴です。

特定事業用宅地等 被相続人が死亡直前に事業に使っていた建物の敷地で、相続した親族が同じ事業を申告期限まで継続して営んでいる宅地。限度面積400㎡、評価額の80%減額が認められる。

貸付事業用宅地等 被相続人が生前にアパート経営や駐車場など「事業的規模」で貸付事業に供していた宅地。相続人が同じ貸付事業を継続していることが条件で、限度面積200㎡、評価額の50%減額が認められる。3年以内に新規開始した貸付事業は原則対象外だが、被相続人が3年を超えて特定貸付事業を行っていた場合には新規宅地も適用される。

特定同族会社事業用宅地等 被相続人が所有し、同族会社が事業用建物の敷地として有償で借り受けて使用していた宅地。取得親族は事業を引き継ぐ必要はないが、申告期限に当該法人の役員であることが求められる。限度面積400㎡、評価額の80%減額が認められる。

特定居住用宅地等 被相続人が死亡直前まで居住していた建物の敷地。配偶者・同居親族・別居親族の取得で要件が異なり、配偶者は継続居住や所有の要件が課されない。同居親族は申告期限まで所有・居住継続が必要で、別居親族は「持ち家がない」「優先的に利用する他の法定相続人がいない」など追加要件を満たす必要がある。限度面積は330㎡、評価額の80%減額が認められる。

限度面積 小規模宅地等の特例で減額が認められる宅地の上限面積。特定居住用は330㎡、特定事業用・特定同族会社事業用は400㎡、貸付事業用は200㎡と定められている。超過分は特例対象外。

建物・構築物の敷地要件 宅地等が建物や構築物の敷地として供されていることが必要で、更地のままや資材置き場等として貸しているだけでは特例の対象にならない。借り手が建物を建てて事業用や居住用として利用している場合など、実態ある利用が前提。

まとめ

小規模宅地等の特例は、相続税の負担を大きく軽減できる強力な制度ですが、適用要件や区分ごとの違い、判定基準、申告期限までの所有・利用状況など実務上のポイントが多数あります。誤解しやすい「3年ルール」や「事業継承者と取得者の一致」などに注意しながら、適切に活用することが重要です。

※本記事の内容は、2025年9月現在施行されている相続税法・関連通達に基づき一般的な概要を説明したものです。具体的な適用の可否や計算方法は個別の状況により異なりますので、実際の申告や相続税対策を行う際にはご相談ください。


執筆者 税理士 大見 光男(おおみ みつお)

税理士登録番号 156268

東京税理士会所属

大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士

略歴

1982年 東京都大田区・六郷土手にて生まれる

2004年 日本大学卒業

2013年 大田区の会計事務所にて、中小法人・医業・不動産所得の申告・節税対策を担当

2017年 税理士登録。大見光男税理士事務所を開業

2018年 著書『だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話』(税務経理協会)を出版

2022年 病気療養のため一時休業

2025年 税理士に再登録し、「大見税理士事務所」を再スタート

保有資格

税理士(税理士登録番号 156268)

セミナー・講演実績

サンワード貿易株式会社 仮想通貨税金セミナー(2019年10月)

仮想通貨節税セミナー「法人化のメリット・デメリット」(2018年10月)

サンワード貿易株式会社「知っていると知らないとじゃ大違い!!」仮想通貨税金セミナー(2018年10月)

一般社団法人日本マイニング協会主催「暗号通貨投資と節税セミナー」(2018年8月・9月・10月)

税理士による仮想通貨の確定申告セミナー(2018年1月)

メディア取材

株式会社KADOKAWA「ASCII.jp」取材(2018年2月)

税理士ドットコム 取材(2018年10月)

書籍・寄稿

『だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話』(ぱる出版)」(2018年10月)

『税経通信』1月号 特集(税務経理協会)「仮想通貨の基礎知識と所得計算実務」(2018年12月)

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